フロスを通したあと、においが気になることがあります。特に、毎回決まった場所だけがにおうという場合。
実はこの「同じ場所」という条件が、かなり多くのことを教えてくれます。
厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、口臭の原因のほとんどを占めるのは舌苔と歯周病で、そのうち舌苔からの産生量のほうが多いとされています。ところが舌苔は舌の上にあるものです。口の中の1箇所だけがにおう理由にはなりません。
つまり特定の場所だけがにおうなら、そこに固有の理由があるということになります。この記事では、その理由として何が考えられるのかを整理します。
においの正体は硫黄を含む気体
まず、においそのものについて確認します。
原因物質は3つ
e-ヘルスネットには次のように記載されています。
硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド
いずれも硫黄を含む気体で、揮発性硫黄化合物と呼ばれます。
口の中で作られる
口臭の大部分(80%以上)は口腔内の気体由来
外から来るものではなく、口の中で作られています。細菌がタンパク質を分解する過程で発生するものです。
だから「汚れの量」ではなく「時間」が効く
同じ場所に汚れが留まる時間が長いほど、分解が進みます。フロスで取れたものがにおうのは、そこに一定時間留まっていたということです。
「毎回同じ場所」が意味すること
ここが本題です。
全体的な原因では説明がつかない
e-ヘルスネットは、口臭の主な原因について次のように述べています。
歯周病・舌苔が原因のほとんどを占め、この両者では舌苔からの産生量の方が多いといわれています
舌苔は舌の表面にあるものです。全体に影響しますが、「上の奥歯の間だけ」といった限定の仕方はしません。
場所が限定されているという情報
毎回同じ1箇所だけがにおうなら、その部位に何かが起きています。
これは困りごとであると同時に、原因の場所が分かっているという状態でもあります。全体的に気になる場合より、確認すべき範囲がずっと狭くなっています。
数日おいて変わらないかを見る
⚠️ 一度だけであれば、その日に食べたものの影響ということもあります。
数日にわたって同じ場所で繰り返すかどうかを見ると、たまたまなのか続いているのかが分かります。
その場所に何があるのか
同じ部位で繰り返す場合、いくつかの状況が考えられます。
⚠️ 以下はあくまで考えられるものの整理であり、この記事で原因を特定することはできません。
食べたものが入り込みやすい場所がある
歯と歯が接する部分の形や当たり方によって、食べたものが入り込みやすい部位ができることがあります。入ったものが留まれば、そこで分解が進みます。
詰め物や被せ物の境目
治療した部分の境目は、構造上どうしても段差になります。その状態によっては、汚れが残りやすくなることがあります。
歯と歯の間にできた虫歯
歯と歯の間は外から見えにくい場所です。鏡で確認できないため、気づきにくい部位でもあります。
歯ぐきの溝が深くなっている部位
歯と歯ぐきの間には溝があります。この溝が深いところは器具が届きにくく、汚れが残りやすくなります。
歯の位置そのもの
そして歯が重なっていたり、ねじれていたりする場所では、器具を入れること自体が難しくなります。
歯と歯が接する部分の形も整いにくいため、食べたものが入り込みやすい状態になることがあります。
フロスが引っかかる、切れる場合
においとあわせて起きやすい現象があります。
決まった位置で止まる
いつも同じ場所で引っかかる、途中で止まる。これは接している部分の形や、そこにあるものによって生じます。
毛羽立つ、切れる
フロスがささくれるように毛羽立ったり、切れたりする場合、その部分に何か引っかかるものがあるということです。
位置が分かるという点では同じ
においも、引っかかりも、その場所に何かがあることを示しています。
⚠️ ただし何があるのかまでは、これらの現象からは分かりません。
フロスが分かること、分からないこと
ここは押さえておきたい線引きです。
分かるのは「場所」
フロスは、問題のある部位を見つける道具として働きます。指先や鏡では届かない範囲の情報を返してくれます。
分からないのは「原因」
一方、その場所に何があるのかは、フロスからは判断できません。虫歯なのか、詰め物の状態なのか、歯ぐきの状態なのか、歯の位置によるものなのか。見え方が同じでも中身は違います。
見えない場所の確認には器具がいる
歯と歯の間の状態を確認するには、レントゲンや器具による検査が使われます。目視でも、鏡でも、フロスでも代わりにはなりません。
自分で確認できる範囲については、以下の記事で整理しています。
当院では診察料・検査料が無料です。
においが分かるのは、外に取り出せるからです
もうひとつ、この現象には特徴があります。
自分の口のにおいは自分で分かりにくい
口の中のにおいは、常にそこにあるため感じ取りにくくなります。家族に指摘されて初めて気づく、ということが起こるのはこのためです。
フロスは口の外に出せる
ところがフロスは違います。通したものを口の外に取り出して、そこだけを確認できます。
口の中全体ではなく、その1箇所の状態だけを切り離して確かめられるという点で、他にあまりない手段です。
気づけたこと自体に意味がある
だから、においに気づいたという状態は、悪い知らせだけではありません。
自分では感じ取りにくい部分について、部位まで分かる形で情報が返ってきているということです。
やらないほうがよいこと
気になると、対処を強めたくなります。
強く押し込む
においが気になるからと力を入れて通すと、歯ぐきを傷つけることがあります。傷ついた部分はかえって状態が悪くなります。
そこだけ避ける
逆にその場所を避けてしまうと、留まる時間が長くなります。においの元は時間とともに増えるため、避けることは対処になりません。
フロス自体をやめる
⚠️ においを理由にフロスをやめるのは、順序が逆です。フロスは原因を作っているのではなく、すでにあったものを外に出しているだけです。
においを消す方向だけで対応する
洗口液などで一時的に感じにくくなることはあります。ただし場所が限定されている場合、その部位の状態自体は変わりません。
歯の位置が関わっている場合
歯科矯正のサイトとして、この点にも触れておきます。
重なっている場所は器具が入りにくい
歯が重なっている部分では、フロスを入れる隙間そのものが狭くなります。時間をかけても届かない部分が残ることがあります。
接している部分の形
歯と歯が接する部分の形が整っていないと、食べたものが入り込みやすい状態になることがあります。
⚠️ ただし、位置が整えば清掃が不要になるわけではない
🔴 ここは正確にお伝えします。歯の位置が整うと器具は入りやすくなりますが、清掃そのものが要らなくなることはありません。汚れは位置に関係なく付きます。
⚠️ 虫歯や歯ぐきの状態によっては、先にその治療が必要になる
🔴 そして、虫歯や歯ぐきの状態によっては、矯正を始める前にその治療が必要になります。場合によっては、その時点では矯正に進めないこともあります。
においが気になっている状態は、まずそちらを確認する段階だということです。
当院が担う部分と、一般歯科が担う部分
当院では口腔内をスキャンして状態を確認し、歯を動かした場合の歯並びを3Dのシミュレーションで見ていただけます。これは歯並びのシミュレーションであり、顔全体の変化を示すものではありません。診察料・検査料は無料です。
⚠️ ただし、においの原因を特定するための検査ではありません。虫歯や歯ぐきの状態の確認、レントゲンによる歯と歯の間の診査は、一般歯科での受診が必要です。
当院で対応できない範囲があること、また検査の結果として矯正に進めないとお伝えすることがあることは、先にお伝えしておきます。
自由診療に関する注記
マウスピース型矯正装置による歯列矯正は自由診療(保険適用外)です。マウスピース矯正 Oh my teeth の標準的な費用はLiteプラン 150,000円(税込・平均約2ヶ月)、Basicプラン 330,000円(税込・平均約3ヶ月)、Proプラン 660,000円(税込・平均約6ヶ月)です。記載の期間は歯を動かす矯正期間であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。主なリスク・副作用として、歯の痛みや違和感、歯根吸収、歯ぐきの退縮に伴うブラックトライアングル(歯と歯の間の隙間)などが生じる場合があります。IPRを行う場合はエナメル質を削るため、知覚過敏が生じることがあります。重度の歯周病や顎関節症のある方、骨格性の不正咬合が強い方などは治療をお受けいただけない場合があります。なおLiteプランには安心保証制度・ワイヤー補償は付帯しません(Basic・Proプランのみ)。
よくある質問
Q. フロスがにおうのは異常ですか。
A. 通したあとに多少のにおいを感じること自体は珍しくありません。ただし毎回同じ場所で繰り返す場合は、その部位に理由があると考えられます。歯科医院でご相談ください。
Q. 場所が特定できません。全体的ににおいます。
A. e-ヘルスネットでは、口臭の原因のほとんどを舌苔と歯周病が占め、そのうち舌苔からの産生量のほうが多いとされています。部位が限定されない場合は、こちらが関係している可能性があります。いずれにしても確認は歯科医院で行われます。
Q. においが気になるので、その部分を強めに通しています。
A. ⚠️ 力を入れて通すと歯ぐきを傷つけることがあります。強さを変えるのではなく、状態を確認していただくほうが確実です。
Q. 歯並びを治せば、においはなくなりますか。
A. そうとは限りません。歯の位置が整うと器具は入りやすくなりますが、清掃が不要になるわけではありません。またにおいの原因が虫歯や歯ぐきの状態にある場合、そちらの治療が先になります。
まとめ
フロスのにおいについて、整理すると次のようになります。
- においの正体は硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイド — いずれも口の中で作られる
- 口臭の80%以上は口腔内由来で、その主な原因は舌苔と歯周病
- 🔴 舌苔は全体に影響するため、1箇所だけがにおう理由にはならない — だから場所が限定されているなら、その部位に固有の理由がある
- 考えられるのは — 食べたものが入り込みやすい形、詰め物の境目、歯と歯の間の虫歯、歯ぐきの溝の深さ、歯の位置そのもの
- 🔴 フロスが教えてくれるのは「場所」まで — 何があるのかは検査で確認する
- 強く通す・避ける・やめる、はいずれも対処にならない
- 🔴 歯の位置が整っても清掃は要る/虫歯や歯ぐきの治療が先になることがある
毎回同じ場所、というのは手がかりです。気づいた時点で、確認すべき範囲は狭くなっています。

