「自宅でホワイトニング」と調べると、市販のグッズを紹介する記事と、歯科医院で行うホームホワイトニングを説明する記事が、同じ検索結果に並びます。どちらも自宅で行うものですが、この2つは性質の違うものです。
分けているのは歯の内部の色を変えられるかどうかという一点です。市販品ができるのは表面に付いた着色を落とすことで、元の歯の色に戻すのが上限になります。歯科で処方される薬剤は、歯そのものの色に作用します。
そして市販品が内部に作用しないのは、効果が弱いからではありません。日本では、歯を漂白する濃度の成分を市販の歯磨き粉に配合することが認められていないという制度上の理由によります。
この記事では、この違いがどこから来ているのかを整理します。
「自宅でできる」が指している2つのもの
まず、自宅で行うホワイトニングとして語られているものを分けます。
| 種類 | 何を使うか | どこで手に入るか | 何に作用するか |
|---|---|---|---|
| 歯科の薬剤を自宅で使う方法 | 歯科で作ったマウスピース+処方された薬剤 | 歯科医院 | 歯の内部 |
| 市販品を使う方法 | 歯磨き粉・ジェル・キットなど | 店舗・通販 | 歯の表面 |
歯科の薬剤を自宅で使う方法
歯科医院で歯型を採って専用のマウスピースを作り、そこに処方された薬剤を入れて、決められた時間装着します。
これは歯科治療であり、「自宅」というのは行う場所を指しているだけです。薬剤は歯科医師から処方され、使用する時間や回数も指示されます。
市販品を購入して使う場合
ホワイトニングをうたう歯磨き粉、ジェル、ライト付きのキットなどを購入して使う方法です。こちらは日用品として販売されているものにあたります。
同じ検索結果に並ぶが、期待できることが違う
この2つは「自宅でできる」という点だけが共通しており、使う薬剤も、作用する場所も違います。混ざったまま比べると、どちらを選んでも期待とずれます。
なお、歯科で行うホワイトニングの方式の分類や、費用の考え方については、以下の記事にまとめています。
分けているのは「元の色より白くできるか」
歯の色は2つの要素でできている
見えている歯の色は、表面に付着した着色と、歯そのものが持っている色が重なったものです。
コーヒーや茶、赤ワイン、喫煙などによって付くのが前者。エナメル質を通して象牙質の色が透けて見えるのが後者にあたります。
市販品が扱うのは表面の着色
市販のホワイトニング製品は、表面に付いた着色を落とすことを目的に作られています。研磨剤や、着色を浮かせる成分が使われます。
落とせば、もともとの歯の色に戻ります。
戻ることと、白くなることは違う
ここが期待とずれやすい部分です。着色を落とした先にあるのは「自分の歯の元の色」であり、それより白くなるわけではありません。
もともとの色が明るい方であれば、着色を落とすだけで十分に変化を感じられます。一方、もともとの色が気になっている場合、着色を落としても目的には届きません。
歯科の薬剤は歯そのものの色に作用する
一方、歯科で処方される薬剤は、歯の内部で色に関わっている有機質に働きかけます。そのため、元の色より明るい方向へ変化しうる、という性質を持ちます。
⚠️ ただし、どの程度変わるかには個人差があり、事前に一律の結果を示せるものではありません。
だから、目的によって選ぶものが変わる
「着色を落としたい」のであれば市販品やクリーニングが選択肢になり、「元の色より白くしたい」のであれば歯科の薬剤を使う方法になります。
この区別を持たずに商品を選ぶと、上限の違う手段に同じ期待をかけることになります。
なぜ市販品は歯の内部に作用しないのか
歯を漂白する濃度の成分は、市販の歯磨き粉に配合できない
理由は制度にあります。日本では、歯を漂白する濃度の過酸化水素を、市販の歯磨き粉に配合することが認められていません。
そのため国内で一般に販売されている製品は、この成分を有効な濃度で含んでいません。
有効な濃度の薬剤は、歯科医師の管理下でのみ使える
一方、歯科医院では歯科医師の管理のもとで、有効な濃度の薬剤を扱うことが認められています。ホームホワイトニングで自宅に持ち帰る薬剤も、この枠組みで処方されるものです。
「歯科でしか扱えない」という区分が先にあり、自宅で使う場合もその枠の中にあるという構造です。
つまり効果が弱いのではなく、そもそも配合できない
ここが整理の要点です。市販品が歯の内部に作用しないのは、製品の性能が劣っているからではありません。その成分を入れることが制度上できないためです。
商品の優劣ではなく、区分の違いです。
だから市販品は「着色を落とす」ことに向けて作られている
この前提のもとで、市販品は表面の着色に対して働くように設計されています。用途としては成立しており、着色が主な原因であれば役割を果たします。
期待の置き方さえ合っていれば、選択肢として妥当なものです。
薬剤が働く仕組みと、濃度と時間の関係
分解の過程で色に関わる物質に作用する
過酸化水素は、分解される過程で反応性の高い物質を生じます。これが歯の着色に関わる有機質を分解して無色化するとされており、その結果として明るく見えるようになります。
高い濃度を短時間か、低い濃度を長時間か
歯科で行う方法と、自宅に持ち帰って行う方法の違いは、主に濃度と時間の組み合わせにあります。
歯科医院で行う場合は高い濃度の薬剤を短時間、自宅で行う場合は低い濃度の薬剤を長い時間かけて使う、という関係になります。
歯科で行う方法では最大35%程度が使われるとされる
歯科医院で行うホワイトニングでは、最大で35%程度の濃度の過酸化水素が使われるとされています。自宅用の薬剤はこれより低い濃度に設定されますが、具体的な濃度は薬剤や処方によって異なります。
自宅で使う場合も、薬剤は処方され、時間も指示される
自宅で行うといっても、薬剤を自分で選んだり、使用時間を自分で決めたりするものではありません。マウスピースは歯科で作られ、薬剤は処方され、装着時間も指示されます。
「自宅でできる」は、通院の回数が少なくて済むという意味であって、自己判断で進める治療という意味ではありません。
自分の歯の状態がどうなっているかは、見てもらうことで分かります。当院では診察料・検査料が無料です。
「セルフホワイトニング」と呼ばれるもの
もうひとつ、区分として押さえておきたいものがあります。
利用者自身が機器を操作する形態がある
歯科医院ではない店舗で、利用者が自分で機器を操作して行う形態のサービスがあります。「セルフホワイトニング」と呼ばれることが多いものです。
歯科医師がいないため、扱える薬剤が異なる
ここでも制度が関わります。歯科医師がいない場所では、過酸化水素を含む薬剤を使うことができません。そのため、別の成分が使われます。
作用するのは表面の着色に対して
使われる成分の性質上、作用するのは表面の着色に対してです。区分としては、市販品と同じ側にあたります。
サービスとして問題があるという意味ではありません。制度上、使える薬剤が違うということです。期待の置き方が合っていれば、選択肢のひとつになります。
自分の黄ばみがどちらなのかを知るには
ここまでの整理を自分に当てはめるには、気になっている色が着色によるものなのか、もともとの歯の色なのかを知る必要があります。
着色は生活習慣によって付く
コーヒー、紅茶、緑茶、赤ワイン、カレーなどの色の濃い飲食物や、喫煙の習慣があると、表面に着色が付きやすくなります。
もともとの歯の色には個人差がある
一方で、歯そのものの色には生まれつきの個人差があります。エナメル質の厚みや、透けて見える象牙質の色によって変わります。
外から見て分けるのは難しい
この2つは重なっているため、鏡で見ただけでは分けられません。着色が主なのか、元の色が主なのかは、見た目からは判断しにくい部分です。
クリーニングで着色を落とすと、元の色が見える
判断の順序としては、まず着色を落としてみるという方法があります。歯科でのクリーニングで表面の着色を除くと、その下にある元の歯の色が見えます。
その状態で判断すると、期待とのずれが小さくなる
元の色が見えた段階で「これで十分」と感じるのであれば、着色が主な原因だったということになります。まだ気になるのであれば、歯そのものの色に作用する方法を検討することになります。
自分で状態を確認するときの撮り方については、以下の記事で扱っています。
始める前に確認しておきたいこと
受けられない場合や、注意が必要な場合がある
ホワイトニングには、先に別の治療が必要な場合や、時期を選んだほうがよい場合があります。該当する条件については、以下の記事にまとめています。
無カタラーゼ症の方は薬剤を使用できない
過酸化水素は体内の酵素の働きで分解されますが、この酵素が働かない無カタラーゼ症の方は、薬剤を使用できません。該当する可能性がある場合は、事前に申し出る必要があります。
矯正治療中の場合は時期の見極めがある
矯正治療と並行して行う場合、装置の状態や歯の動き方によって、適した時期があります。この点も上記の記事で扱っています。
どちらが向いているかを相談する
自分の場合に何が向いているのかは、気になっている色が何によるものかで変わります。そしてそれは、見てもらうことで分かる部分です。
当院は矯正歯科ですが、ホワイトニングも扱っています。歯の状態を確認したうえで、着色によるものなのか、歯そのものの色なのかを含めてご相談いただけます。診察料・検査料は無料です。
なお、着色が主な原因である場合には、市販品やクリーニングで目的に届くこともあります。そう分かること自体も判断材料になります。
自由診療に関する注記
マウスピース型矯正装置による歯列矯正は自由診療(保険適用外)です。マウスピース矯正 Oh my teeth の標準的な費用はLiteプラン 150,000円(税込・平均約2ヶ月)、Basicプラン 330,000円(税込・平均約3ヶ月)、Proプラン 660,000円(税込・平均約6ヶ月)です。記載の期間は歯を動かす矯正期間であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。主なリスク・副作用として、歯の痛みや違和感、歯根吸収、歯ぐきの退縮に伴うブラックトライアングル(歯と歯の間の隙間)などが生じる場合があります。IPRを行う場合はエナメル質を削るため、知覚過敏が生じることがあります。重度の歯周病や顎関節症のある方、骨格性の不正咬合が強い方などは治療をお受けいただけない場合があります。なおLiteプランには安心保証制度・ワイヤー補償は付帯しません(Basic・Proプランのみ)。
よくある質問
Q. 市販のホワイトニング歯磨き粉に効果はないのでしょうか。
A. 表面の着色を落とすという用途では機能します。歯の内部の色に作用しないのは、制度上その成分を配合できないためであって、製品として問題があるという意味ではありません。着色が気になっている場合には、選択肢として成立します。
Q. 自宅でのホワイトニングは自己判断で始められますか。
A. 歯科の薬剤を使う方法は、自己判断で始めるものではありません。マウスピースは歯科で作られ、薬剤は処方され、使用時間も指示されます。市販品については購入して使えますが、期待できる範囲は表面の着色に対してです。
Q. どのくらいで変化が出ますか。
A. 一律の目安を示すことはできません。もともとの歯の色、着色の程度、使う方法によって変わります。変化の出方には個人差があります。
Q. 矯正治療中でもできますか。
A. 時期の見極めが必要になります。装置の状態や歯の動き方によって適した時期が変わるため、詳しくはマウスピース矯正中にホワイトニングはできる?始める時期の見極め方をご覧ください。
まとめ
自宅でのホワイトニングについて、整理すると次のようになります。
- 「自宅でできる」は2つの違うものを指している — 歯科の薬剤を自宅で使う方法と、市販品を使う方法
- 分けているのは「歯の内部の色を変えられるか」 — 市販品は表面の着色を落とすもので、元の歯の色に戻すのが上限
- 市販品が内部に作用しないのは制度上の理由 — 日本では歯を漂白する濃度の過酸化水素を市販の歯磨き粉に配合できない
- 有効な濃度の薬剤は歯科医師の管理下でのみ扱える — ホームホワイトニングもこの枠の中にある
- 「自宅でできる」は通院が少なくて済むという意味であって、自己判断で進める治療という意味ではない
- 自分の黄ばみが着色なのか元の色なのかは、外から見て分けにくい
選ぶ前に決めておくとよいのは、「着色を落としたい」のか「元の色より白くしたい」のかという点です。ここが決まれば、どちらの区分を見ればよいかが決まります。
出典
- なぜ市販のホワイトニング歯磨き粉では歯を白くできないのですか?(西永福歯科・小児歯科・矯正歯科)
- 過酸化水素配合の歯磨き粉とは?ホワイトニング効果と使用時の注意点を解説(ムクノキ歯科)
- ホワイトニングの歯磨き粉って、本当に白くなるの?(オーラルクリニーク)
- ホワイトニング用薬剤に含まれる「過酸化水素」の作用と安全性(南森町スマイリー歯科)

