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インビザラインとは?全部のマウスピースを先に作る仕組みから解説

インビザラインについて調べると、透明で目立たない、取り外せる、1日20時間以上の装着が必要、1〜2週間ごとに交換する、追加のマウスピースを作ることがある——といった説明が並びます。項目としては分かるものの、それぞれがなぜそうなっているのかまでは書かれていないことが多く、覚えることだけが増えていきます。

これらはばらばらの特徴ではありません。治療で使うマウスピースを、治療を始める前に全部まとめて作ってしまう。この一点から、ほとんどが説明できます。

なお、当院はマウスピース矯正 Oh my teeth を提供している矯正歯科です。この記事はインビザラインを勧めるものでも、否定するものでもなく、仕組みがどうなっているのかを整理するものとして書いています。後半で触れる研究データは、当院が扱う治療にも同じように当てはまります。

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※自由診療。2020年1月~2023年7月Basicプランの実績値(戻り防止器具をつける保定期間を除く)。マウスピースを破損、紛失した場合などは別途料金が発生します。上下前歯の部分矯正プランを120回払いで支払う場合の分割支払い金額(初回3,519円総額420,019円)。

目次

インビザラインは装置の名前ではなく、システムの名前

提供しているのはアライン・テクノロジー社

インビザラインは、米国のアライン・テクノロジー社が提供しているブランドの名前です。透明なマウスピース(アライナー)を順に交換しながら歯を動かしていく治療で使われます。

ブランド名と、治療方法の名前

一方「マウスピース矯正」は、透明なマウスピースを使って歯を動かす治療方法の総称です。インビザラインはそのうちの1つにあたります。

日常的にはほぼ同じ意味で使われることが多いのですが、ブランド名と、治療方法の名前という違いがあります。マウスピース矯正には他にも複数のブランドがあり、それぞれ対応する範囲や進め方が異なります。

装置だけを指しているわけでもない

さらに言えば、インビザラインという言葉が指しているのはマウスピースそのものだけではありません。治療計画を立てるソフトウェア、その計画に沿った製造、交換していく順序の設計まで含んだ一連の仕組みを指しています。

この記事で扱うのは、その仕組みのほうです。

治療で使う全部のマウスピースを、始める前に作る

30〜60枚をまとめて作製する

治療に使うマウスピースの枚数は、どの歯をどれだけ動かすかによって変わります。目安として30〜60枚程度になることが多いとされますが、この全部を、治療を始める前に作ってしまいます。

治療が始まった時点で、最後の1枚まですでに存在している、という状態です。

1枚あたりに動かす量が決められている

作られたマウスピースは、少しずつ形の違うものが順番に並んでいます。1枚ごとに歯の位置がわずかにずれた設計になっていて、順に替えていくことで、歯がその形に向かって動いていきます。

1枚あたりに動かす量は小さく設定されています。無理のない範囲で少しずつ動かすためです。

次の1枚は、前の1枚で計画どおり動いた状態を前提に作られている

ここが仕組みを理解するうえでいちばん重要な点です。

5枚目のマウスピースは、4枚目までで歯が計画どおりに動いた状態に合わせて作られています。10枚目は9枚目までが終わった状態に合わせて作られています。それぞれが独立しているのではなく、前の結果を前提に次が用意されているという連鎖になっています。

作ったあとは、途中で形を変えられない

全部が先に作られているということは、裏を返せば途中で1枚だけ作り直す、少し形を変える、といったことができないということでもあります。

ワイヤーを使う矯正では、通院のたびにその場で装置を調整します。インビザラインでは、その判断が治療を始める前に集約されています。

この作り方から、言われている注意点のほとんどが導ける

よく挙げられる注意点は、どれも独立したルールではありません。

よく言われていること作り方から見た理由
1日20時間以上装着する1枚が動かす量は、その時間装着することを前提に設計されている
決められた周期で交換する早くても遅くても、設計された動きとずれる
自己管理が必要通院時の調整でずれを吸収する設計になっていない
途中で計画を変えにくいすでに全部作られているため

なぜ1日20時間以上と言われるのか

1枚のマウスピースが歯を動かす量は、その時間だけ力がかかり続けることを前提に決められています。装着している時間が短ければ、かかる力の総量が足りず、設計された分だけ動きません。

「装着時間を守る」というのは心構えの問題ではなく、設計上の前提条件にあたります。

なぜ交換の周期が決まっているのか

交換の周期は、おおむね1〜2週間ごととされています(周期は治療計画によって異なります)。

早く替えれば早く進むわけではありません。1枚あたりの動きが完了する前に次へ進むことになり、そのぶんずれが生じます。逆に長く使い続けても、設計された量以上には動きません。

守れなかったとき、何が起きるのか

装着時間が足りない日が続くと、その1枚で予定していた動きが完了しないまま、次の1枚に進むことになります。

次の1枚は「前が完了した状態」に合わせて作られているため、合わない状態から始まります。そしてそのずれは、次の1枚、その次の1枚へと持ち越されていきます。1枚ごとに元に戻る仕組みではないため、ずれは解消されずに蓄積する方向に働きます。

ただし、これは「守れなかったら治療が失敗する」という意味ではありません。ずれが大きくなった場合の対処が用意されており、それが後半で触れる工程です。守れなかった日があった場合ほど、担当の歯科医師に伝えておく意味があります。

なぜ「自己管理が必要」と言われるのか

ワイヤーを使う矯正では、通院のたびに歯科医師が装置を調整し、そのときの状態に合わせて力のかけ方を変えられます。ずれが生じても、次の通院である程度吸収できます。

インビザラインでは、その調整が治療を始める前にまとめて済ませてあるため、日々の装着が計画どおりに行われているかどうかが、そのまま進み方に反映されます。

計画どおりに動く割合は研究で報告されている

ここまで「計画どおりに動けば」という前提で説明してきましたが、実際にはどのくらい計画どおりに動くのでしょうか。この点は臨床研究として報告されています。

2009年に報告された数値

2009年に矯正歯科の学術誌で発表された研究では、前歯の移動について、計画された動きのうち平均41%が実現したと報告されています。対象は37名、測定されたのは前歯401本(上顎198本・下顎203本)です。

その後、改善が報告されている

この研究は2009年のもので、2011年にマウスピースの素材が変更される前の時期にあたります。

その後の研究では改善が報告されており、2024年に発表された系統的レビューでは、2020年に行われた前向き研究において精度が50%まで向上したと紹介されています。

この数値が測っているもの

⚠️ ここは正確に読む必要があります。

これらの数値は、「1つの計画で予定された動きのうち、どれだけが実際に実現したか」の割合です。治療の成功率でも、治療がうまくいった人の割合でもありません。

足りなかった分は、そこで終わりになるわけではなく、あらためて計画を立て直して補われます。つまりこの数値は、「1回の計画で全部は動ききらない」ということを示しています。

マウスピース型の装置に共通する性質

そしてこれは、インビザラインに固有の欠点ではありません。取り外しのできる樹脂製の装置で歯を動かす以上、力の伝わり方には限界があり、同じ性質が生じます。

当院が提供しているマウスピース矯正も例外ではありません。装置の種類にかかわらず、計画と実際の動きにずれが生じることは前提に置いて考える必要があります。

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動きの種類によって得意・不得意がある

平均だけを見ると分かりにくいのですが、どの方向に動かすかによって、実現しやすさは大きく違います。

最も効果的とされる動き

先ほどの系統的レビューでは、上顎の大臼歯を後方へ動かす動き(遠心移動)が最も効果的で、およそ87%と紹介されています。平均の50%と比べると、かなり高い数字です。

最も精度が低いとされる動き

一方、挺出(ていしゅつ)——歯を歯ぐきから引っ張り出す方向の動き——は最も精度が低いとされています。2009年の研究では挺出全体で29.6%、なかでも上顎の中切歯(前歯の中央2本)の挺出は18.3%と報告されています。

「難しい症例」の正体は「難しい動きを多く含む症例」

マウスピース矯正には対応しにくい症例がある、という説明はよく見かけます。この内訳が、動きの単位まで下ろすと見えてきます。

症例そのものが難しいというより、その症例を治すために必要な動きのなかに、実現しにくい動きが多く含まれているという構造です。だから、同じ「難しい」と言われる状態でも、必要な動きの内訳によって見通しは変わります。

装置の構造からも同じ結論になる

興味深いのは、この研究データが、装置の構造から導かれる説明と一致することです。

マウスピースは歯の噛む面まで覆う形をしているため、噛んだときに歯を押し下げる方向の力がかかります。引っ張り出す動きは、この力と逆向きになります。構造から予測されることと、実際に測定された精度が、同じ方向を指しています。

この点は、噛み合わせが深い状態を扱った記事で詳しく説明しています。

だから、作り直す工程が組み込まれている

リファインメントと呼ばれる

1回の計画で全部が動ききらないのであれば、そのままでは治療が完了しません。そこで、途中であらためて歯型を取り、残りの動きに合わせてマウスピースを作り直す工程が用意されています。リファインメント、あるいは追加アライナーと呼ばれます。

ほとんどの場合に行われるとされる

この工程は例外的なものではなく、初回に作ったマウスピースだけでは治療が完了しないため、ほとんどの場合に必要になるとされています。

どのくらいの割合で行われるかについては、医院によって示している数字に差があります。数値としては挙げませんが、「起きたら異常」という位置づけのものではないという点は共通しています。

追加分の枚数と待機期間

追加で作るマウスピースの枚数は、大きな作り直しがなければ20枚以内に設定することが多いとされます。また、歯型を取り直してから追加分を使い始めるまでには、1〜2ヶ月程度の待機期間が入ります。

例外的な事態ではなく、設計に含まれている工程

ここまでを合わせると、インビザラインは「1回の計画で動ききる」という前提では設計されていないことが分かります。ずれが生じることを織り込んだうえで、補正する工程が組み込まれています。

追加のマウスピースを作ることになったとき、それは治療がうまくいかなかったことを意味するとは限りません。

実際に期間の延長を告げられたときにどう受け止めるかについては、以下の記事で扱っています。

ただし、確認しておくことはある

一方で、追加分が何回まで含まれるのか、費用がどう扱われるのかは、契約するパッケージや医院によって異なります。ここは治療を始める前に聞いておける項目です。

計画を作るのは、プログラムと歯科医師の両方

クリンチェックというソフトウェアを使う

治療計画は、アライン・テクノロジー社が構築した「クリンチェック」と呼ばれる3Dのシミュレーションソフトウェア上で組み立てられます。口腔内をスキャンしたデータをもとに、歯がどう動いていくかを画面上で再現できます。

過去の治療実績をもとにしたプログラムが土台にある

このソフトウェアは、同社がこれまでに蓄積した理論と治療実績をもとに作られています。歯の動き方の予測や、どういう設計にすれば動きやすいかといった部分に、そのデータが反映されています。

実際に計画を組み立てるのは歯科医師

ただし、プログラムが自動的に治療計画を出してくれるわけではありません。

どの歯をどの順序で動かすか、どこまで動かすか、途中でどんな処置を入れるか。こうした判断は歯科医師が行い、そのうえでソフトウェア上に計画として組み立てられます。プログラムは道具であり、方針を決めるのは人です。

だから同じブランドでも、計画は同じにならない

ここから導かれることがあります。インビザラインを選ぶことと、どういう計画で治療が進むかが決まることは、別だということです。

同じブランドを使っていても、立てられる計画は担当する歯科医師によって変わります。ブランド名は、治療内容を保証するものではありません。

治療計画がどの段階で立てられ、何が決まるのかについては、以下の記事で流れに沿って説明しています。

契約の前に、組まれた計画を確かめる

ここまで見てきたとおり、マウスピース矯正では治療の中身が計画の段階でほぼ決まります。そして計画は、治療を始める前に見ることができます。

当院では、口腔内をスキャンしたデータから、歯が動いたあとの歯並びを3Dのシミュレーションで確認していただけます。どの歯がどう動く計画になっているのかを、契約の前に目で見て確かめられます。

診察料・検査料は無料です。

自由診療に関する注記

マウスピース型矯正装置による歯列矯正は自由診療(保険適用外)です。マウスピース矯正 Oh my teeth の標準的な費用はLiteプラン 150,000円(税込・平均約2ヶ月)、Basicプラン 330,000円(税込・平均約3ヶ月)、Proプラン 660,000円(税込・平均約6ヶ月)です。記載の期間は歯を動かす矯正期間であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。主なリスク・副作用として、歯の痛みや違和感、歯根吸収、歯ぐきの退縮に伴うブラックトライアングル(歯と歯の間の隙間)などが生じる場合があります。IPRを行う場合はエナメル質を削るため、知覚過敏が生じることがあります。重度の歯周病や顎関節症のある方、骨格性の不正咬合が強い方などは治療をお受けいただけない場合があります。なおLiteプランには安心保証制度・ワイヤー補償は付帯しません(Basic・Proプランのみ)。

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よくある質問

Q. インビザラインとマウスピース矯正は同じものですか。

A. 厳密には違います。マウスピース矯正は透明なマウスピースで歯を動かす治療方法の総称で、インビザラインはそのなかの1つのブランドです。日常的にはほぼ同じ意味で使われますが、マウスピース矯正には他のブランドもあり、対応できる範囲や進め方はそれぞれ異なります。

Q. 装着時間を守れない日があったら、どうなりますか。

A. その1枚で予定していた動きが完了しないまま次に進むことになり、ずれが持ち越されます。ただし1日守れなかったことで治療が終わるわけではありません。ずれが大きくなった場合には計画を立て直す工程があります。守れない日が続いている場合は、隠さずに担当の歯科医師へ伝えてください。進み具合の判断に必要な情報になります。

Q. 追加のマウスピースは何回まで作れますか。

A. 契約するパッケージと医院によって異なります。回数に上限が設けられている場合も、含まれる範囲が決まっている場合もあります。治療を始める前に、追加分の回数と費用の扱いを確認しておくことができます。

Q. 治療前のシミュレーションどおりの歯並びになりますか。

A. シミュレーションは治療計画を示すものであり、そのとおりに動くことを保証するものではありません。研究では、1つの計画で予定された動きのうち実現するのは一部であると報告されています。この点は装置の種類を問わず共通で、当院が提供する治療も同様です。足りない分は計画を立て直して補っていくことになります。

まとめ

インビザラインについて言われている特徴は、ばらばらのルールではなく、「治療で使う全部のマウスピースを、始める前に作ってしまう」という一点から出ています。

  • 30〜60枚程度を治療前にまとめて作る。次の1枚は、前の1枚で計画どおり動いた状態を前提に作られている
  • だから装着時間と交換周期が設計上の前提条件になる。守れないとずれが次に持ち越される
  • 計画された動きのうち実現するのは一部と研究で報告されている(治療の成功率ではない)
  • だから作り直す工程(リファインメント)が最初から組み込まれている
  • 動きの種類によって得意・不得意がある。「難しい症例」は「実現しにくい動きを多く含む症例」
  • 計画を組み立てるのは歯科医師。ブランドを選ぶことと、計画の内容が決まることは別

これらの性質は、取り外しのできるマウスピースで歯を動かす方法に共通するもので、当院が扱う治療にも当てはまります。仕組みを知っておくと、説明を受けたときに何を聞けばよいかが分かります。

出典

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