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噛み合わせが深いとマウスピース矯正は難しい?理由を装置の構造から解説

歯科検診で「噛み合わせが深い」と言われた。調べてみると過蓋咬合という名前があり、そしてマウスピース矯正は苦手とされている、という記述に行き当たる。

困るのは、そこに理由が書かれていないことです。苦手というのは、技術的にできないという意味なのか、時間がかかるという意味なのか、程度によるという意味なのか。結論だけを受け取っても、自分の場合に当てはめようがありません。

この難しさには、装置の構造に由来するはっきりした理由があります。過蓋咬合の治療では歯を上下方向に動かす必要があるのに対し、マウスピースの形状は、その動きの一部と逆向きに働きやすいというものです。

この記事では、治療で行う歯の動きを整理したうえで、なぜマウスピース矯正で難度が上がるのかを構造から説明します。そのうえで、対応するための工夫についても触れていきます。

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※自由診療。2020年1月~2023年7月Basicプランの実績値(戻り防止器具をつける保定期間を除く)。マウスピースを破損、紛失した場合などは別途料金が発生します。上下前歯の部分矯正プランを120回払いで支払う場合の分割支払い金額(初回3,519円総額420,019円)。

目次

噛み合わせが深いとはどういう状態か

まず言葉の確認から始めます。

上の前歯が下の前歯を大きく覆っている

奥歯を噛み合わせたとき、上の前歯が下の前歯を覆う量が大きい状態を過蓋咬合といいます。ディープバイトと呼ばれることもあります。正常とされる範囲では、上の前歯が下の前歯を2〜3mm程度覆う形になりますが、それを大きく超えて覆っている状態です。

笑ったときに下の前歯が見えにくい

見た目の特徴として、笑ったときに下の歯がほとんど見えないという点が挙げられます。人によっては、下の前歯が完全に隠れて見えないこともあります。

噛んだときに下の前歯が見える量でいうと、通常は3〜4mm程度見えるのに対し、覆いが深い場合は2mm程度、あるいはまったく見えない状態になります。

診断で使われる目安

臨床では、上下前歯の垂直的な重なりが3mm以上ある場合、または下の前歯の3分の1以上が隠れている場合に、過蓋咬合の診断基準を満たすとされています。

ただしこれは診断のための基準であり、鏡を見て自分で当てはめるためのものではありません。実際に何mm重なっているかは、噛み合わせた状態の内部を計測しないと分かりません。

自覚しにくい

前歯が前に出ている、歯が重なっているといった状態と違い、深い噛み合わせは自分では気づきにくいものです。歯科検診や矯正の相談で指摘されて初めて知る方が多くいます。噛めていることには変わりがないため、日常のなかで不便を感じにくいことも理由です。

開咬とは逆の関係

前歯が上下で当たらない状態を開咬といい、これは過蓋咬合とは逆の関係にあります。どちらも上下方向の噛み合わせに関わる状態です。開咬については前歯が当たらない噛み合わせはどうやってなおす?開咬について解説で扱っています。

なぜ深くなるのか

原因は一つではなく、いくつかの要因が重なっていることもあります。

前歯の位置や角度によるもの

上の前歯が内側に倒れて生えていると、下の前歯を覆う量が大きくなります。前歯そのものの生え方が関わっている場合です。

奥歯の高さが足りないもの

前歯側ではなく、奥歯側に理由がある場合もあります。奥歯の噛み合う高さが低いと、その分だけ前歯が深く重なります。歯を失ったまま放っておいた場所がある、奥歯がすり減っているといった事情が関わることもあります。

顎の骨格によるもの

上下の顎の位置関係や、顎の成長の方向が関わっている場合があります。この場合は歯の位置だけを動かしても、改善できる範囲に限りが出ることがあります。

噛みしめや食いしばりの習慣

日常的に強く噛みしめる癖があると、奥歯がすり減って高さが下がり、結果として前歯の重なりが深くなっていくことがあります。

原因によって方針が変わる

これらのうち、どれが主な要因かによって治療の方針は変わります。前歯を動かすのか、奥歯側を持ち上げるのか、あるいは骨格の問題として扱うのか。同じように見える深い噛み合わせでも、中身が違えば進め方も変わります。

深い噛み合わせで起こりうること

状態について触れておきますが、これらはいずれも起こりうることであって、すべての方に生じるものではありません。

下の前歯が上の歯ぐきに当たることがある

覆う量が大きいと、下の前歯の先端が上の前歯の裏側の歯ぐきに接触することがあります。当たり方によっては、その部分に負担がかかる場合があります。

前歯がすり減ることがある

上下の前歯が強く当たる状態が続くと、歯の先端がすり減っていくことがあります。長い時間をかけて少しずつ進むため、変化に気づきにくい性質があります。

顎に負担がかかることがある

噛み合わせの深さによっては、顎の動きが制限されることがあります。それが顎の関節への負担につながる場合もあります。

症状がないことも多い

一方で、深い噛み合わせであっても痛みや不調をまったく感じない方も多くいます。状態の程度と、自覚症状の有無は一致するとは限りません。症状がないから軽い、症状があるから重い、と単純には言えない部分です。

治療で行う3つの歯の動き

ここから本題です。過蓋咬合を改善するとき、歯は次のように動かされます。

動き内容役割
圧下(あっか)上の前歯を歯ぐきの方向へ押し込むように動かす覆っている量を減らす
挺出(ていしゅつ)奥歯を歯ぐきから引っ張り出す噛み合う位置を高くする
傾斜移動前歯の根の先端は動かさず、頭の部分を前方に倒す前歯の角度を調整する

圧下は難度の高い移動

上の前歯を歯ぐきの方向へ沈み込ませる動きを圧下といいます。歯を前後に動かすのとは違い、歯を骨の中へ押し込む方向の移動です。矯正治療で行う歯の動きのなかでも、難度が高いものとされています。

挺出で噛み合う高さを変える

もうひとつの方法が、奥歯を引っ張り出す挺出です。小臼歯を中心に奥歯の位置を高くすることで、前歯の覆う量を相対的に減らします。前歯を押し込むのではなく、奥歯側を持ち上げるという発想です。

傾斜移動で角度を整える

前歯が内側に倒れていることが深さの一因になっている場合、角度を調整する動きも加わります。根の位置は保ったまま、歯の頭の部分を動かす形です。

動かす方向が他の症例と違う

ここが重要な点です。出っ歯や歯の重なりの治療では、歯を主に前後・左右の方向に動かします。これに対して過蓋咬合の治療では、上下方向のコントロールが中心になります。動かす軸が違うということです。

マウスピース矯正で難しいとされる理由

この上下方向という点が、装置の構造と関わってきます。

マウスピースは歯の噛む面を覆っている

マウスピースは歯全体を包み込む形をしており、歯の噛む面である咬合面も覆っています。歯列全体にはめ込む構造上、当然そうなります。

装着中、奥歯には沈み込む力がかかりやすい

咬合面が覆われているということは、上下の歯の間にマウスピースの厚みが挟まっている状態です。この状態で噛むと、奥歯には歯ぐきの方向へ沈み込む力がかかりやすくなります。

必要な動きと逆方向に働く

そして先ほど見たとおり、過蓋咬合の治療で必要なのは、奥歯を引っ張り出す挺出です。

つまり装置の構造によって生じる力と、治療で起こしたい動きの向きが逆になります。何もしなければ、装置をつけている時間そのものが治療の方向と反対に作用しかねません。これが「マウスピース矯正は過蓋咬合が苦手」と言われることの中身です。

圧下そのものも難度が高い

加えて、もう一方の手段である圧下も、前述のとおり難度の高い移動です。上下方向のコントロールという課題に対して、二つの手段のどちらにも難しさがあるという構図になります。

それでも対応する方法がある

ここまでを読むと「では無理なのか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。難しさが分かっているからこそ、対策が設計されています。

咬合挙上用のアタッチメントを使う

歯の表面に付ける小さな突起であるアタッチメントには、いくつかの種類と役割があります。そのなかに、噛み合わせの高さを調整する目的で使うものがあります。

前歯の裏側などに高さを作ることで、奥歯が噛み合う前に前歯側で当たる状態をつくります。奥歯どうしが直接当たらなくなるため、先ほど述べた「奥歯が沈み込む力」を受けにくくなります。装置の構造から生じる不利を、設計で打ち消す考え方です。

顎間ゴムを併用する

上下の歯にゴムを掛けて力を加える顎間ゴムを併用し、垂直方向の改善を図る設計もあります。装置単体ではかけにくい方向の力を、別の手段で補う考え方です。

装置の種類だけで可否は決まらない

治療計画を作る技術や設計の精度は向上しており、装置の種類だけで治療の可否を判断するのは適切とはいえないとされています。マウスピース矯正だから対応できない、という決まり方はしません。

判断を左右するのは、噛み合わせの深さの程度、その原因が歯の位置にあるのか骨格にあるのか、そして治療計画の内容です。

ワイヤー矯正や併用が選ばれる場合もある

一方で、程度によってはワイヤー矯正が選ばれることや、装置を併用することもあります。ワイヤー矯正は歯を上下方向に動かす力をかけやすいという性質があるためです。どちらが優れているという話ではなく、必要な動きに対してどの手段が向いているかという選択になります。

装置ごとの違いはワイヤー矯正とは?メリット・デメリットと矯正装置の種類を解説インビザライン(マウスピース矯正)とワイヤー矯正どっちを選ぶ?にまとめています。

自分の噛み合わせがどの程度で、どの方法が向いているか。これは検査を受けて治療計画が立ってはじめて分かります。診察料・検査料が無料であれば、費用をかけずに確認できます。

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自分の程度は自分では分からない

判断のために知っておきたい点をまとめます。

覆っている量は外から測れない

鏡で見て「下の歯が見えにくい」ということは分かりますが、実際に何mm覆っているかは分かりません。噛み合わせた状態の内部を見る必要があるためです。

原因が歯にあるか骨格にあるか

深い噛み合わせには、前歯の位置や角度が主な原因の場合と、顎の骨格の形が関わっている場合があります。外見が似ていても、原因が違えば治療の方針も変わります。この区別にはエックス線写真による分析が要ります。

検査を経て治療計画が立つ

したがって、対応できるかどうかは検査の後に判明します。治療計画の段階では、3Dシミュレーションで歯の動き方や仕上がりの見通しを確認できます。上下方向の変化は自分で想像しにくいため、画像で見られることには意味があります。

マウスピース矯正で対応が難しいケース全般についてはマウスピース矯正ができない6つの症例!対処法や治療方法もご紹介にまとめています。

治療期間と当院の進め方

上下方向の移動を含むため、前後方向が中心の治療と比べると期間に幅が出やすい傾向があります。どのくらいかかるかは、深さの程度と治療計画によって変わります。いずれも歯を動かす期間であり、後戻りを防ぐ保定期間は別に必要です。

マウスピース矯正 Oh my teeth では、診察料・検査料は無料です。検査のうえで治療計画を立て、3Dシミュレーションで治療後の歯並びを確認できます。対応できる範囲かどうかも、この段階で説明を受けられます。

自由診療に関する注記

マウスピース型矯正装置による歯列矯正は自由診療(保険適用外)です。マウスピース矯正 Oh my teeth の標準的な費用はLiteプラン 150,000円(税込・平均約2ヶ月)、Basicプラン 330,000円(税込・平均約3ヶ月)、Proプラン 660,000円(税込・平均約6ヶ月)です。記載の期間は歯を動かす矯正期間であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。主なリスク・副作用として、歯の痛みや違和感、歯根吸収、歯ぐきの退縮に伴うブラックトライアングル(歯と歯の間の隙間)などが生じる場合があります。IPRを行う場合はエナメル質を削るため、知覚過敏が生じることがあります。重度の歯周病や顎関節症のある方、骨格性の不正咬合が強い方などは治療をお受けいただけない場合があります。なおLiteプランには安心保証制度・ワイヤー補償は付帯しません(Basic・Proプランのみ)。

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よくある質問

Q. 噛み合わせが深いままでも問題ありませんか?

痛みや不便がなければ、すぐに何かをしなければならないというものではありません。ただし本文で触れたとおり、歯や歯ぐきに負担がかかる場合があり、変化は長い時間をかけて少しずつ進みます。気になる場合は一度状態を診てもらい、程度を把握しておくと判断しやすくなります。

Q. マウスピース矯正で対応できるかは何で決まりますか?

噛み合わせの深さの程度、原因が歯の位置にあるか骨格にあるか、そして治療計画の内容によります。装置の種類だけで決まるものではありません。アタッチメントや顎間ゴムを組み合わせた設計で対応する場合もあります。

Q. 前歯だけの部分矯正で治せますか?

深さの改善には奥歯側の高さも関わるため、前歯だけを動かす範囲では対応が難しい場合があります。どこまでの範囲が必要かは、原因と程度によって変わります。

Q. 治療中に噛み合わせが不安定に感じることはありますか?

歯を動かしている最中は、当たり方が変わっていく段階があります。上下方向を動かす治療では、この変化を感じやすいことがあります。気になる場合は次の通院を待たずに相談して構いません。

まとめ

噛み合わせが深い状態の治療では、上の前歯を押し込む圧下と、奥歯を引っ張り出す挺出という、上下方向の動きが必要になります。出っ歯や歯の重なりの治療が主に前後方向であるのに対し、動かす軸が違います。

マウスピース矯正で難しいとされるのは、装置が歯の噛む面を覆う構造のため、装着中に奥歯へ沈み込む力がかかりやすいためです。治療で必要な挺出とは逆の向きになります。これが「苦手」と言われることの中身です。

ただし、咬合挙上用のアタッチメントや顎間ゴムを組み合わせることで対応する設計もあり、装置の種類だけで可否が決まるわけではありません。判断は、深さの程度と原因、そして治療計画によります。自分の場合にどうなるかは、検査を受けて確かめることになります。

出典

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