前歯が大きいことが気になっていて、削って小さくできるなら費用を知りたい。そう考えて調べ始める方は少なくありません。
削る治療にはいくつかの方法があり、費用は数万円から1本十数万円まで幅があります。この幅は医院ごとの値付けの違いというより、削る量と、元に戻せるかどうかの違いによるものです。
そしてもうひとつ、費用を比べる前に確かめておきたいことがあります。前歯が大きく見える原因は、実際に歯が大きい場合だけではありません。傾きや重なり、歯ぐきの位置が理由のこともあり、その場合は削っても期待した変化になりません。
この記事では、まず方法ごとの費用と削る量を整理し、そのうえで原因の切り分けについて見ていきます。
前歯を削る3つの方法と費用の目安
削って形を変える治療は、大きく3つに分かれます。
| 方法 | 削る量 | 費用の目安 | 元に戻せるか |
|---|---|---|---|
| 形態修正 | エナメル質の範囲(全体で2〜3mm程度が限度) | 数万円程度 | 戻せない(ただし削る量は最小) |
| ラミネートベニア | 表面を0.3〜0.7mm程度 | 1本あたり16万円程度 | 戻せない |
| 被せ物(セラミッククラウン) | 歯の全周囲を1〜2mm程度 | 1本あたり8〜18万円 | 戻せない |
いずれも自由診療にあたり、費用は医院によって異なります。以下はあくまで一般的に示されている目安です。
形態修正(歯冠削合)
歯の表面や角をわずかに削り、形やバランスを整える方法です。何かを貼ったり被せたりせず、自分の歯そのものの形を変えます。
削る量が最も少なく、費用も数万円程度と抑えられます。ただし削れる範囲には限りがあるため、大きく形を変えることはできません。角を丸くする、長さをわずかに整えるといった調整が中心になります。
ラミネートベニア
歯の表面を0.3〜0.7mm程度削り、そこに薄い板状のセラミックを貼りつける方法です。削るのは表面のエナメル質の範囲にとどまります。
形や色を変えられる自由度が高く、費用は1本あたり16万円程度が目安とされています。複数本行えばその分だけ加算されます。
被せ物(セラミッククラウン)
歯の全周囲を1〜2mm程度削り、上から被せ物をする方法です。3つのなかで削る量が最も多くなります。
費用は1本あたり8〜18万円程度が目安です。素材によって幅があります。
何本行うかで総額が変わる
表に示した費用は1本あたりの目安です。前歯は左右対称に見えるため、1本だけ処置すると隣の歯との差が出ることがあります。そのため上の前歯2本、あるいは4本、6本とまとめて行うことが少なくありません。
つまり総額は「1本の費用 × 本数」で考えることになります。1本16万円の方法を4本行えば60万円を超える計算です。何本必要になるかは、見え方のバランスによって決まります。費用を見積もる際は、本数まで含めて確認しておく必要があります。
削る量・費用・元に戻せなさは連動している
3つを並べると、ある関係が見えてきます。形を変えられる自由度が上がるほど、削る量が増える。そして削った歯は元に戻りません。
費用の違いも、単に高い安いではなく、この「どこまで変えられるか」と対応しています。したがって費用だけを横に並べて比べても、選ぶ材料にはなりにくいことになります。
矯正の途中で行う「削る」とは目的が違う
なお、矯正治療の途中でも歯を削ることがあります。歯と歯の間をわずかに削ってすき間を作る処置で、IPRやディスキングと呼ばれます。
ただしこれは歯を動かす場所を確保するための工程であり、見た目の形を整えることが目的ではありません。削る位置も歯と歯の接する面で、正面から見える部分ではありません。削る量も1ヶ所あたりごくわずかです。
同じ「削る」という言葉でも、形を変えるための処置と、動かすための処置は別のものです。相談の場で話が食い違わないよう、どちらの意味かを確認しておくと行き違いを防げます。
削れる量には上限がある
もうひとつ、期待の前提として知っておきたいことがあります。
全体で2〜3mm程度が限度
歯を削れる量には限りがあります。一般に、削れる範囲は全体で2〜3mm程度とされています。歯には内部に神経があり、その手前までしか削れないためです。
超えると起こりうること
限度を超えて削ると、知覚過敏が生じたり、歯そのものがもろくなったりすることがあります。冷たいものがしみる、欠けやすくなるといった変化です。
エナメル質の範囲かどうか
歯の表面はエナメル質という硬い層で覆われています。削る範囲がこのエナメル質にとどまっていれば、健康面への影響は少ないとされています。逆にその内側まで削ると、話が変わってきます。
「好きなだけ小さくできる」わけではない
つまり、思い描いた大きさまで自由に削れるとは限りません。どのくらい変えられるかは、もともとの歯の大きさと厚みによって決まります。削る前に、何mm削る計画なのかを確認しておくことが実務的な意味を持ちます。
「大きく見える」原因は大きさとは限らない
ここが本記事でいちばん伝えたい点です。前歯が大きく見える理由は、歯そのものの大きさだけではありません。
実際に歯の幅が大きい場合
歯の横幅そのものが平均より大きい場合です。この場合は、削って形を整えることが目的に合った手段になります。
参考までに、上の前歯(中切歯)の平均的な幅は、日本人でおおむね8.5〜8.6mm程度とされています。長さは10〜11mm程度です。幅が9mmを超えると大きめと判断される傾向があり、長さ12mm以上・幅10mm以上になると見た目への影響が出やすいとされています。
なお、縦と横の比率がおよそ1.0対0.8のやや縦長の形が、バランスの取れた形とされています。幅だけでなく、長さとの関係も印象を左右するということです。
ただし、これらの数値を自分の歯に当てはめるのは簡単ではありません。鏡越しに正確に測ることは難しく、また平均を超えていても、顔立ちや他の歯とのバランスの中で自然に見えている場合もあります。数値は判断の入口であって、結論ではありません。
前に傾いている・出ている場合
前歯が前方に傾いていると、正面から見たときに面積が広く見えます。実際の大きさは変わっていなくても、角度によって大きく見えている状態です。
この場合、削って幅を詰めても前に出ている状態は残ります。期待した変化にはなりにくいことになります。口元の突出については口ゴボは歯科矯正でなおすべき?原因や治療するメリットを解説で扱っています。
隣の歯と重なって1本だけ目立つ場合
歯並びに重なりがあると、前に出ている歯だけが目立ちます。周りの歯が引っ込んで見えるぶん、その1本が大きく感じられます。比較の問題であって、大きさの問題ではない場合です。
歯ぐきの位置で長く見える場合
歯ぐきの位置が高いと、歯が縦に長く見えます。この場合、幅を削っても縦の印象は変わりません。歯ぐき側の処置が関わる領域になります。
顔全体とのバランスによる場合
口の大きさや唇の形、顔の輪郭との関係で、歯が大きく見えることもあります。歯だけを見て判断できない部分です。
原因が大きさでなければ、削っても解決しない
まとめると、「大きく見える」と「大きい」は別のことです。原因が傾き・重なり・歯ぐきの位置にある場合、削るという手段はその原因に届きません。
そして原因がどれに当たるかは、鏡を見ただけでは判断が難しいものです。歯の実際の幅を計測し、歯並び全体や骨格との関係を見てはじめて分かります。診察料・検査料が無料であれば、費用をかけずに確認できます。
削らずに位置を変えるという選択肢
原因が傾きや重なりだった場合、歯を動かす治療が対応します。
動かせば見え方が変わる
前に傾いている歯を起こす、重なりを整えて並びをそろえる。こうした変化によって、正面から見たときの印象が変わります。歯そのものの大きさは変わりませんが、大きく見えていた理由のほうを取り除くという考え方です。
範囲を限定できる場合もある
気になるのが前歯だけであれば、動かす範囲を限定する方法もあります。全体を動かす場合と比べて、期間や費用の見通しが変わります。詳しくは前歯だけ矯正はできる?矯正方法について解説とマウスピース矯正で前歯だけ治療できる?にまとめています。
適応や費用については部分矯正が向いている歯並びは?向いてる症例や費用を紹介と部分矯正の値段を矯正方法別に比較で扱っています。
歯を削らずに済む
動かす治療では、原則として歯そのものを削りません。元の歯を残せることは、後から選択肢を狭めないという意味があります。
一方で期間はかかる
ただし、歯を動かすには時間が必要です。削る治療が数回の通院で完了しうるのに対し、動かす治療は月単位から年単位になります。どちらが優れているということではなく、何を優先するかで選ぶことになります。
急いでいるのか、元の歯を残したいのか、費用を抑えたいのか。優先順位によって答えが変わります。
削る治療を選ぶ場合に確認したいこと
原因が歯の大きさにあると分かり、削る方法を選ぶ場合には、次の点を聞いておくと判断しやすくなります。
何mm削る計画か
数値で聞いておくと、どの程度変わるのかの見当がつきます。「少しだけ」という説明では、期待とのずれが起きやすくなります。
エナメル質の範囲に収まるか
前述のとおり、ここが健康面への影響を分ける境目のひとつです。範囲を超える場合は、その理由と対応も聞いておきます。
神経への影響の可能性
削る量が多い方法では、歯の神経に近づきます。影響が出る可能性があるかどうかを確認しておきます。
費用に含まれる範囲
型取り、仮歯、後日の調整、やり直しが必要になった場合の扱い。これらが表示価格に含まれるかは医院によって異なります。
自由診療であること
見た目を整える目的の治療は自由診療にあたり、保険は適用されません。費用の負担については歯科矯正で使える医療費控除のやり方は?申請時のポイントも解説もあわせてご覧ください。
当院でできること
当院は矯正歯科であり、歯を動かす治療を行っています。形態修正やセラミック治療そのものを提供しているわけではありません。
そのうえで、本記事で述べた原因の切り分けについてはお手伝いできます。診察料・検査料は無料で、前歯が大きく見える理由が歯の大きさなのか、位置や傾きなのかを確認できます。歯を動かす治療が向いている場合は、3Dシミュレーションで位置を変えたときにどう見えるかを治療前に確認できます。
削るかどうかを決める前に、原因を把握しておくと選択の精度が上がります。歯を動かす期間は治療範囲によって変わり、後戻りを防ぐ保定期間は別に必要です。
自由診療に関する注記
マウスピース型矯正装置による歯列矯正は自由診療(保険適用外)です。マウスピース矯正 Oh my teeth の標準的な費用はLiteプラン 150,000円(税込・平均約2ヶ月)、Basicプラン 330,000円(税込・平均約3ヶ月)、Proプラン 660,000円(税込・平均約6ヶ月)です。記載の期間は歯を動かす矯正期間であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。主なリスク・副作用として、歯の痛みや違和感、歯根吸収、歯ぐきの退縮に伴うブラックトライアングル(歯と歯の間の隙間)などが生じる場合があります。IPRを行う場合はエナメル質を削るため、知覚過敏が生じることがあります。重度の歯周病や顎関節症のある方、骨格性の不正咬合が強い方などは治療をお受けいただけない場合があります。なおLiteプランには安心保証制度・ワイヤー補償は付帯しません(Basic・Proプランのみ)。
よくある質問
Q. 削るだけで顔の印象は変わりますか?
歯の見え方は変わりますが、削れる量には限りがあるため、変化の幅もその範囲に収まります。口元全体の印象は、歯の大きさだけでなく前歯の位置や唇との関係にも左右されます。どの程度変わるかは、原因と削る計画によって異なります。
Q. 削った歯は元に戻せますか?
削った歯そのものを元に戻すことはできません。被せ物や貼りつけたものを外すことはできますが、削った部分が回復するわけではありません。この点は、方法を選ぶうえで押さえておきたいところです。
Q. 保険は使えますか?
見た目を整える目的の場合、保険は適用されず自由診療になります。虫歯の治療など別の目的が伴う場合の扱いは、内容によって変わります。
Q. 矯正と削る治療は併用できますか?
歯を動かして位置を整えたうえで、形を微調整するという進め方が取られることもあります。順序や必要性は状態によるため、両方を検討している場合は最初の相談時に伝えておくと計画を立てやすくなります。
まとめ
前歯を削る治療には、形態修正・ラミネートベニア・被せ物という3つの方法があります。費用の目安は数万円程度から1本18万円程度までと幅がありますが、これは削る量と、どこまで形を変えられるかに対応しています。いずれも自由診療で、医院によって異なります。
削れる量には全体で2〜3mm程度という上限があり、思い描いた大きさまで自由に小さくできるとは限りません。
そして最も大切なのは、大きく見える原因が歯の大きさとは限らないということです。傾き、重なり、歯ぐきの位置が理由であれば、削っても原因には届きません。費用を比べる前に、まず原因を確かめる。この順序が、結果的に無駄のない選択につながります。
出典
- 前歯を削る審美治療(歯の形態修正)(東京銀座ビアンコ矯正歯科)
- 前歯が大きい場合の削る治療法と費用|医療費控除の適用も解説(ウィスマイル矯正)
- 前歯のセラミック治療費用|素材別価格と選び方(あんどう歯科・美容皮フ科)
- 前歯のセラミック治療、費用は?見た目は?(なんばアップル歯科)
- 前歯が大きく見える原因と治療法を徹底解説(hanaravi歯科矯正blog)
- 前歯が大きい…大きい前歯を小さく治療する治療法とメリットデメリット(東京日本橋エムアンドアソシエイツ矯正歯科)(中切歯の平均幅・巨大歯の目安)
- 前歯の平均的な長さは何センチ?長く見える原因と治療方法(ウィスマイル矯正)

