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セラミックは「絶対ダメ」?言われている理由と、条件で変わる部分を解説

歯並びを整える方法を調べていると、セラミックを使う方法について強い否定の言葉が並んでいることがあります。数ヶ月で終わると知って気持ちが傾いていたところに、こうした言葉を見つけて、そのまま進めなくなった方もいるかもしれません。

はじめにお伝えしておくと、当院は矯正歯科であり、歯を動かす治療を行っています。セラミックによる治療そのものを提供しているわけではありません。提供していない治療について、勧めることも否定することもしないという立場でこの記事を書いています。

否定の理由として挙げられている内容は、多くが事実に基づいています。ただしそれらは、どの歯に、どのくらいの変化を求めるかによって、当てはまり方が変わります。ひとまとめに「ダメ」とされてしまうと、この違いが見えなくなります。この記事では、挙げられている懸念を性質ごとに分け、どこが条件で変わり、どこが変わらないのかを整理していきます。

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目次

「絶対ダメ」と言われるとき、何が比べられているのか

歯を動かす矯正とは、手段そのものが違う

歯並びを整える方法として紹介されるセラミックの治療は、歯の外側を削り、そこにセラミック製の人工の被せ物を装着するものです。歯科の分野では補綴(ほてつ)と呼ばれる領域にあたります。出ている歯、傾いている歯、重なっている歯に対して、削ったうえで整った形の被せ物をかぶせることで、正面から見たときの並びを整えます。

一方、ワイヤーやマウスピースを使う矯正治療は、歯そのものを顎の骨の中で移動させます。時間はかかりますが、歯を削って形を作り替えることはしません。

セラミックを使う方法では歯の位置は変わりません。歯があるところはそのままで、外から見える形だけを作り替えます。同じ「歯並びを整える」という言葉で語られていても、行っていることは別のものです。

治療法の全体像については、以下の記事でも整理しています。

整った見た目と引き換えに差し出すものが違う

この2つを分けているのは、優劣ではなく、何を差し出すかという点です。

歯を動かす方法では、時間を差し出します。骨の中で歯が移動するには相応の期間が必要で、動かし終えた後も位置を保つための期間が続きます。そのかわり、歯の組織はそのまま残ります。セラミックを使う方法では、歯の組織を差し出します。削った部分は戻りません。そのかわり、必要な期間は大きく短縮されます。

だから「どちらが優れているか」という問いが成立しにくい

時間と歯の組織は、どちらが大切かを一般論として決められるものではありません。何年も待てる人もいれば、事情があって待てない人もいます。歯の組織を減らしたくない人もいれば、すでに治療を受けていて残っている量が少ない歯もあります。

「絶対ダメ」という言い方には、この前提が省かれています。省かれた前提を戻すことが、判断のために必要な作業になります。

挙げられている懸念を分解する

否定の理由として挙げられているものは、大きく4つに整理できます。

挙げられている懸念内容当てはまり方
歯の組織を失う被せ物を入れるために歯を削る。削った部分は戻らない歯の状態によって変わる
神経を抜く場合がある削る量が神経に近づくと、抜く処置が必要になることがある条件によって変わる
噛み合わせは変わらない見た目を整える治療であり、噛み合わせを治すものではないとされる条件によらず共通
作り直しの時期がある被せ物は入れて終わりではなく、いずれ交換が必要になる条件によらず共通

上の2つは、歯と希望によって大きさが変わる

被せ物を入れるためには、その厚みの分だけ歯を削る必要があります。歯の組織は再生しないため、削った部分は戻りません。また削る量が神経に近づくと、痛みやしみる症状を避けるために神経を抜く処置が必要になることがあります。

ただしこの2つは、一律に同じ大きさで起きるわけではありません。手つかずの歯と、すでに大きく治療されている歯とでは、新たに失う量が違います。神経についても、条件によって判断が変わります。どういう条件で決まるのかが、この記事でもっとも重要な部分です。

下の2つは、どの歯に行っても共通する

セラミックを使う方法は、被せ物によって見た目を整える治療であり、噛み合わせの治療はできないとされています。歯の位置が変わらない以上、上下の歯が当たる関係も基本的には変わりません。また被せ物は人工物であり、口の中で長く使われるうちに劣化や不具合が生じます。一度入れれば一生そのまま、というものではありません。

4つは同じ重さではない

つまり、条件によって当てはまり方が変わるものと、誰にとっても共通するものが混ざっています。「絶対ダメ」という言い方では、この区別が潰れてしまいます。自分にとって重いのがどれなのかを見分けるには、4つを分けたまま扱う必要があります。

神経を抜くかどうかは何で決まるのか

抜く処置が必要とされる場合として挙げられているもの

セラミックの治療において神経を抜く処置が必要になる場合として、次のようなものが挙げられています。

  1. すでに歯がズキズキ痛む、熱いものや冷たいものがしみる、根の先に膿ができているなど、症状がある場合
  2. 大きな虫歯があり、神経まで達する可能性が予想される場合
  3. 虫歯や欠けによって残っている部分が少なく、補強しても十分な耐久性が見込めない場合
  4. 歯の傾きを変える必要があり、神経を残したままでは対応できない場合

1〜3は、歯の側の理由

最初の3つは、治療を受ける前から決まっている条件です。すでに症状がある、すでに大きな虫歯がある、すでに大きく欠けている。いずれも歯そのものの状態が理由になっています。

この場合、セラミックの治療を選ばなかったとしても、いずれ神経の処置が必要になる可能性があります。

4だけは、求める変化の大きさが理由

一方、4つ目は性質が異なります。歯の状態ではなく、どこまで見た目を変えたいかによって決まります。

前に出ている歯を、引っ込んでいるように見せる。傾いている歯を、まっすぐ立っているように見せる。歯そのものは動いていないため、これを実現するには削る位置と量で調整することになります。

変えたい量が大きいほど、削る量が増える

ここに連動があります。並びの変化を大きく求めるほど、削らなければならない量が増えます。そして削る量が増えるほど、神経までの距離が近づきます。

つまり、「どこまで変えたいか」という希望の大きさが、そのまま神経を残せるかどうかに影響します。わずかな不揃いを整える場合と、大きく出ている歯を引っ込んだように見せる場合とでは、同じ治療名でも中身が違うということです。

削る量そのものと費用の関係については、以下の記事で方法別に整理しています。

神経を抜いた歯に起こりうること

神経を抜いた歯には、次のような変化が起こりうるとされています。

  • 割れやすくなる — 神経の処置を行った歯は耐久性が下がり、破折が起きやすくなります
  • 変色していく — 治療後、数年をかけて褐色や灰色に変色していくことがあります
  • 将来の選択肢が減る — 一度神経を抜くと、その後に取れる治療の幅が狭くなります

また、痛みやしみる感覚を感じ取れなくなるため、虫歯が進行しても気づきにくくなります。

温存が望ましいとされていること

こうした理由から、やむを得ない場合を除いて神経は残すことが望ましいとされています。「抜くこともあります」という説明を受けた場合、それがやむを得ない事情によるものなのか、求める変化の大きさによるものなのかを分けて聞くことができます。

同じ治療でも、歯の状態によって失うものが変わる

ここが「絶対ダメ」という言い方でもっとも見えなくなる部分です。

神経があり、削っていない歯の場合

手つかずの歯を削る場合、新たに失う組織の量がもっとも大きくなります。健康な状態のものを、戻せない形で減らすことになります。

否定の言葉がもっとも強く当てはまるのは、この場合です。「健康な歯を削る」という表現が指しているのも、ここを想定しています。

大きな詰め物が入っている歯の場合

過去に虫歯の治療を受け、大きな詰め物が入っている歯では、すでに一部の組織が失われています。この場合、新たに削る量は相対的に小さくなります。

失うものが少ないという意味ではありません。残っている量が少ないぶん、慎重に考える理由も別にあります。ただし、手つかずの歯を削る場合とは前提が違います。

すでに神経がない歯の場合

過去に神経の処置を受けている歯では、神経を抜くかどうかという判断そのものが発生しません。またこうした歯は年月とともに変色していることが多く、白さを回復する目的で被せ物が選ばれることもあります。

1本ずつ状態が違うことがある

前歯が6本並んでいたとして、6本すべてが同じ状態とは限りません。手つかずの歯もあれば、詰め物が入っている歯、神経のない歯が混ざっていることもあります。

まとめて1つの治療として語られると、この違いが見えなくなります。

「セラミックはダメか」ではなく「この歯にとってどうか」

以上のことから、治療法そのものへの評価では答えが出ないことが分かります。同じ治療でも、どの歯に行うかで失うものが変わるためです。

判断のためには、自分の歯が今どういう状態にあるのかを知る必要があります。神経が残っているか、どのくらい削られているかは、レントゲンなどで確認できます。なお、どの治療が適しているかを記事の情報だけで判断することはできません。実際の状態を確認したうえでの説明を受けてください。

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治療が終わる時期と、付き合いが終わる時期は違う

短期間で終わるのは、治療期間の話

セラミックを使う方法が選ばれる大きな理由が、期間の短さです。被せ物の作成期間はおおむね1〜2週間とされ、本数が少ない場合には1〜2ヶ月程度で治療を終えられることもあるとされています。

歯を動かす治療が年単位になることを考えると、大きな違いです。

被せ物には交換の時期が来る

一方で、被せ物は口の中で使われ続ける人工物です。噛む力を受け、温度の変化を受け、汚れにさらされます。いずれ作り直しが必要になる時期が来ます。

治療そのものは数ヶ月で終わっても、その被せ物との付き合いはそこから始まります。この2つは別の時間軸の話です。

国内の調査で報告されている数値

被せ物がどのくらいの期間使われているかについては、国内の調査があります。臼歯部(奥歯)の修復物を対象とした調査では、次のように報告されています。

修復物の種類10年後に残っていた割合平均使用期間
メタルインレー67.5%3,804日(約10年5ヶ月)
4/5冠60.5%3,332日(約9年1ヶ月)
コンポジットレジン60.4%3,532日(約9年8ヶ月)
メタルクラウン55.8%3,276日(約9年)
メタルブリッジ31.9%2,557日(約7年)

この数値をそのまま当てはめることはできない

ここは正確に扱う必要があります。この調査の対象は奥歯であり、素材は保険診療で使われる金属やレジンです。前歯に入れるセラミックの寿命を示したものではありません。

部位が違えば、かかる力の向きも大きさも変わります。素材が違えば、劣化の仕方も変わります。「セラミックは約9年で交換になる」と読むことはできません。

それでも共通して言えること

素材や部位が違っても、人工物には作り直しの時期があるという点は変わりません。「一度入れれば終わり」という前提で考えると、後から想定と違うことになります。なお上の調査では、作り直しの原因として被せ物の下や周囲に新たに生じた虫歯が多く挙げられています。人工物と歯の境目は、汚れが残りやすい場所になります。

始める年齢によって、回数が変わる

同じ治療でも、始める年齢によって想定される作り直しの回数は変わります。30代で入れた場合、その後の年月を考えると複数回の作り直しが想定されます。

これは治療の欠点というより、計算に入れておく項目です。入れるときの費用だけでなく、続いていく費用として考えることになります。費用の内訳については、先ほどの前歯を削る費用はいくら?方法別の削る量と、削る前に確認したいことで整理しています。

期限があって急いでいる場合

期限があると、判断軸が1つに絞られやすい

結婚式、就職活動、大きな行事。決まった日までに見た目を整えたいという事情は珍しくなく、それ自体は間違った動機ではありません。

ただし期限があるとき、比較は「間に合うか、間に合わないか」に単純化されがちです。間に合うほうを選ぶ、という一次元の比較になり、期間以外の項目が抜け落ちます。

期間以外の軸を並べてみる

判断の材料として、少なくとも次の4つは並べて見ることができます。

  • 削る量 — どのくらいの組織を失うことになるか
  • 神経 — 残せる見込みがあるか、抜く前提の計画か
  • 作り直し — 次に手を入れるのはいつごろになりそうか
  • 噛み合わせ — 見た目だけを変えるのか、噛み合わせも対象にするのか

期間が短いことは事実として1つの利点です。ただし、それが唯一の比較軸になっているかどうかは、確認しておく価値があります。

期限に間に合う方法が1つとは限らない

歯の位置を整えてから、必要な範囲だけ形を整える、という順序を取る場合もあります。位置が変わったあとであれば、形を整えるために必要な量が変わることがあるためです。ただしこの順序を取れば期間は長くなります。

また動かす治療のほうも、範囲を限定すれば期間が変わることがあります。前歯だけを対象とする方法については、以下の記事で扱っています。

ただし、範囲を限定できるかどうかは歯並びの状態によります。すべての場合に当てはまるものではありません。

相談のときに確認しておきたいこと

その歯に神経が残っているか

まず自分の歯の状態を知ることが出発点になります。レントゲンで確認できる内容で、過去の治療の記憶があいまいな場合も画像で分かります。

神経を残せる見込みがあるか、抜く前提の計画か

計画の段階で、神経についてどう想定されているかを聞くことができます。「残せる見込みがある」のか「抜く前提で組んでいる」のかは、大きな違いです。

抜く前提であれば、その理由が歯の状態によるものなのか、求めている見た目の変化によるものなのかまで聞いておくと、判断の材料が増えます。また途中で神経の処置が加わった場合に、期間と費用がどう変わるのかも事前に確認できる項目です。

作り直しの時期と、そのときの扱い

何年程度を目安に考えているか、そのときの費用や保証の扱いはどうなるのか。入れるときの説明だけでなく、その先について聞いておくと、続いていく費用として見通せます。

動かす治療と比べた説明を受けたか

どちらの方法を検討している場合でも、もう一方についての説明を聞いておくと比較ができます。判断のために両方の情報を持っておく、という意味です。

なお、歯を動かす治療にも適応の範囲があります。動かす方法であればどんな歯並びでも対応できる、というものではありません。この点は以下の記事で扱っています。

また、矯正治療の中でも歯を削る処置が行われることがあります。目的も量も異なりますが、「矯正なら一切削らない」というわけではありません。

動かした場合にどう変わるかを見ておく

比較の材料として、歯を動かした場合にどこまで変わるのかを知っておくことができます。

当院では、口腔内をスキャンして得たデータから、歯を動かした後の歯並びを3Dのシミュレーションで確認していただけます。これは歯並びのシミュレーションであり、削る治療の結果を示すものではありません。あくまで「動かした場合にどうなるか」を見るためのものです。

診察料・検査料は無料です。どちらの方法を検討している場合でも、比較の材料を1つ増やすという使い方ができます。

自由診療に関する注記

マウスピース型矯正装置による歯列矯正は自由診療(保険適用外)です。マウスピース矯正 Oh my teeth の標準的な費用はLiteプラン 150,000円(税込・平均約2ヶ月)、Basicプラン 330,000円(税込・平均約3ヶ月)、Proプラン 660,000円(税込・平均約6ヶ月)です。記載の期間は歯を動かす矯正期間であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。主なリスク・副作用として、歯の痛みや違和感、歯根吸収、歯ぐきの退縮に伴うブラックトライアングル(歯と歯の間の隙間)などが生じる場合があります。IPRを行う場合はエナメル質を削るため、知覚過敏が生じることがあります。重度の歯周病や顎関節症のある方、骨格性の不正咬合が強い方などは治療をお受けいただけない場合があります。なおLiteプランには安心保証制度・ワイヤー補償は付帯しません(Basic・Proプランのみ)。

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よくある質問

Q. セラミックを使う方法は、やめたほうがいいのでしょうか。

A. 治療法そのものに対して一律の答えを出すことはできません。同じ治療でも、手つかずの歯に行う場合と、すでに神経のない歯に行う場合とでは、失うものが変わります。求める変化の大きさによっても、削る量と神経への影響が変わります。自分の歯がどの状態にあるかを確認したうえで、担当の歯科医師と相談してください。

Q. 一度入れたセラミックを外して、歯を動かす治療に切り替えられますか。

A. 被せ物を外すこと自体はできますが、そのために削った歯の組織は戻りません。神経を抜いている場合も同様です。切り替えを考える段階では、すでに失ったものを前提として計画を立てることになります。この不可逆性が、事前に検討しておく理由になります。

Q. 神経を抜くかどうかは、いつ分かりますか。

A. 検査を行い、治療計画を立てる段階で想定が示されます。ただし、削り進めた結果として判断が変わる場合もあります。計画の段階で「どちらの想定か」と「変わる可能性があるとすればどういうときか」を聞いておくことができます。

Q. 歯を動かす矯正なら、歯を削らずに済みますか。

A. 削らずに済む場合もありますが、すべてではありません。歯を並べる場所が足りないとき、歯と歯が接する面をわずかに削るIPRという処置が行われることがあります。削る量は0.25mm程度とされ、被せ物のために削る量とは大きく異なりますが、「動かす治療なら一切削らない」というわけではありません。

まとめ

セラミックを使う方法について挙げられている否定の理由は、多くが事実に基づいています。ただしその中身は一様ではありません。

  • 歯を削る量と、神経を抜くかどうかは、歯の状態と求める変化の大きさによって変わる
  • 噛み合わせが変わらないことと、作り直しの時期があることは、条件によらず共通する
  • 神経を抜く理由には、歯の側の事情によるものと、求める見た目の変化によるものがある
  • 手つかずの歯に行う場合が、失うものがもっとも大きい
  • 短期間で終わるのは治療期間の話であり、被せ物との付き合いはそこから始まる

「絶対ダメ」という言い方は、これらの前提をすべて省いています。省かれた前提を戻すと、問いは治療法への評価ではなく、自分のこの歯にとってどうかという問いに変わります。神経が残っているか、どのくらい削られているか、求めている変化にどれだけの量が必要か。ここが分かってはじめて、比較ができるようになります。

出典

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