方式も費用も一通り調べて、あとは予約するだけ。そこまで来たところで「しない方がいい」という言い方に行き当たり、手が止まる。薬剤で歯を漂白する以上、歯に何も起きていないはずがないのではないか——そう感じるのは自然なことだと思います。
ただ、そう言われる理由を並べていくと、1種類の話ではないことが見えてきます。制度として基準が定められている部分と、歯や体の条件によって当てはまる部分と、期待とのズレから来る部分。性質の違うものが、同じ言葉でまとめて語られています。
この3つは、確かめ方も対処も違います。順に分けていきます。
「しない方がいい」と言われる理由は、同じ重さではない
挙げられている理由を並べていくと、性質の違うものが混ざっていることが分かります。
ひとつめは、歯そのものへの影響についての話。薬剤が歯に何をするのか、という疑問です。
ふたつめは、その人の状態や時期についての話。今は別のことを先にしたほうがよい、あるいはこの時期は控える、という条件が当てはまるかどうかです。
みっつめは、期待と結果のズレについての話。思っていたほど白くならなかった、すぐ戻った、という結果から出てくるものです。
確かめ方が、それぞれ違う
このうち、調べれば分かるのは最初のひとつだけです。医療機器としてどんな審査を受けているかは、公開されている資料で確認できます。
状態や時期の話は、歯を診てもらわないと自分に当てはまるか分かりません。期待のズレにいたっては、始める前にすり合わせておけばそもそも起きない性質のものです。
「全員がやめるべき」という形の話ではない
3つのどれも、条件や状況を抜きにして「誰もがやめるべきだ」という形では書かれていません。混ざったまま読むと強い警告に見えますが、分けてみると、それぞれ別の対処に対応していることが分かります。
制度として基準が定められている部分
いちばん気になるのは、ひとつめでしょう。ここについては、厚生労働省が示している「歯科用漂白材等審査ガイドラインについて」を読むと、何がどこまで確認されているのかが見えてきます。
漂白材は、歯科医師の管理下で使うものとして分類されている
このガイドラインは漂白材を2つに分けています。歯科医師、または歯科医師の管理下で歯科衛生士が患者に適用する製品と、歯科医師の管理下で患者が自ら用いる製品です。
自宅で使うものも「歯科医師の管理下」という枠の中に置かれている、という点がここで分かります。自分で使うから管理の外、という扱いにはなっていません。
患者が自ら用いる製品には、濃度の上限が置かれている
患者が自ら用いる製品については、毒劇物管理濃度を超えることはできない、と定められています。毒劇物管理濃度とは、過酸化水素であれば6.0%を超える濃度を指します。
この上限がかかるのは、患者が自ら用いる製品のほうです。歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が適用する製品には、この形の上限は置かれていません。
歯そのものへの影響が、審査項目として立てられている
ここがこの不安に直接かかわる部分です。ガイドラインの「性能に関する事項」には、歯面硬さ、歯面溶解性、漂白性、そして漂白成分の濃度と処置時間・使用回数という項目が並んでいます。
いずれもJIS T 6542という規格に準じて試験することになっています。歯面硬さについては、漂白処置の前後でヌープ硬さまたはビッカース硬さの低下率が10%を超えてはならない、と定められています。歯面溶解性については、歯面溶解深さが陽性対照によるものの3倍を超えてはならない、とされています。
つまり「歯に影響があるのではないか」という疑問は、審査する側も同じ疑問を持っていて、測る項目として立てているということになります。白くなるかどうか(漂白性)と並んで、歯がどうなるかが評価の対象に置かれています。
このほかガイドラインには「安全性に関する事項」という項もあり、リスクマネジメントの規格にもとづく生物学的評価を実施することが求められています。患者が自ら用いる製品については、家庭内での使用環境等を想定してハザードを特定し、リスクを推定することとも書かれています。自宅で使うという条件が、評価の前提として別途置かれているということです。
「影響がない」ではなく「上限が定められている」
答えの形は、この基準の書き方そのものにあります。「漂白処置の前後で硬さが変わらないこと」とは書かれていません。 低下率が一定の範囲を超えてはならない、という書き方です。
制度が引いているのは、影響をゼロにする線ではなく、どこまでを許容範囲とするかの線です。「もろくなるか、ならないか」という二択で答えが出ないのは、問いの立て方が制度の考え方とずれているためです。
使う時間と回数は、製品ごとに使用方法として示される
同じ項では、処置時間の範囲を最短時間から最長時間まで、使用回数の範囲を最大使用回数まで設定することができる、とされています。時間と回数には製品ごとに範囲があり、それが使用方法として示される建て付けです。
そしてガイドラインは、漂白材の処置時間・処置回数について「硬さ、溶解性、漂白性及び安全性から設定すること」としています。時間と回数の設定は、先に挙げた硬さや溶解性の基準と切り離されていません。使う時間や回数を自己判断で増やすことは想定されていない、という建て付けです。
歯や体の条件によって当てはまる部分
ふたつめの、自分に当てはまるかどうかの話です。ここから先は公益社団法人 神奈川県歯科医師会の解説によります。
当てはまるかどうかを、先に確かめておく
自宅で行う方法についての解説では、歯科治療中やむし歯・歯周病など口腔内の問題がある場合、使用前に治療を完了させるよう案内されています。これは「してはいけない」ではなく「順番がある」という話です。先に治療を終えれば、条件は変わります。
時期による条件もあります。妊娠中や授乳中の方については、胎児や乳児への影響が不明なため使用を控えるよう説明されています。理由が「影響が確認されている」ではなく「影響が不明」である点も、そのまま読んでおきたいところです。
これらはいずれも、事前の問診と診査で確認する項目です。
条件は方式によっても変わります。自宅で進める場合はホームホワイトニングは何ヶ月かかる?白くなるまでと戻るまでの進み方に、歯科医院で受ける場合はオフィスホワイトニングは1回で終わる?回数・持ち・しみやすさの関係にまとめています。
期待とのズレから来る部分
みっつめは、結果が思っていたものと違ったときに出てくる話です。ここは事前に分かることばかりなので、先に埋めておけます。
まず、目指せる白さには幅があります。神奈川県歯科医師会の別の解説では、ホワイトニングで明るくはなっても、もともとの色によっては純白にするのは難しいとされています。
次に、人工物の色は変わりません。同じ解説では、むし歯の治療などで詰め物や被せ物がある場合、その部分には色の変化がおきないと説明されています。前歯に入っていれば、周りだけが明るくなって差が出ることになります。
そして、白さが続く期間には方式による差があります。自宅で行う方法は白さが比較的長期間にわたり維持されやすいとされる一方、歯科医院で受ける方法は、治療後に時間が経つと色調が後戻りするのが自宅で行う方法より早い、とされています。
ズレは、始める前なら埋められる
この3つはいずれも、受けたあとに初めて分かることではありません。どこまでを目指すのか、人工物をどう扱うのか、どのくらいの間隔で続けるつもりなのか。始める前にすり合わせておけば、「しなければよかった」という形にはなりにくくなります。
施術のあいだと直後に起こること
3つは「しない方がいい」と言われる理由を分けたものですが、受けている最中と直後に実際に起こることは、理由とは別の話になります。分けて置いておきます。
神奈川県歯科医師会の解説では、オフィスホワイトニングの注意点として、一時的に歯がしみる症状が生じる場合があることが挙げられています。あわせて、自宅で行う方法と比べると知覚過敏症状が生じやすい傾向にも触れられています。出やすさは方式によって違うということです。
自宅で行う方法についての解説にも、痛みや過敏症を感じたときの扱いが書かれています。その場合はいったん使用を止め、歯科医師に相談することとされています。症状が出たときに自己判断で続けない、というのはどちらの方式にも共通します。
方式ごとの違いはオフィスホワイトニングは1回で終わる?回数・持ち・しみやすさの関係で整理しています。
では、自分の場合はどう確かめるか
3つに分けたところで、自分の場合に落とし込みます。
自分の状況を並べてみる
今むし歯の治療中なのか、妊娠中や授乳中なのか、前歯に人工物が入っているのか。ここは自分の状況を並べれば、ある程度は見当がつきます。
一方で、自覚のないむし歯があることもありますし、いまの歯の色がどのあたりなのかは自分では判断しにくい部分です。神奈川県歯科医師会の解説も、方法を選ぶ前に歯科医師の診察と十分な説明を受けること、そのうえで自分の生活や管理のしかたに合うものを選ぶことを重視しています。
制度の部分についても、資料を読んで納得するより、実際に使う薬剤がどういう位置づけのものなのかをその場で聞いたほうが早く済みます。
相談のときに聞いておきたいこと
「大丈夫ですか」と聞くと「大丈夫です」で終わってしまいます。聞く形を具体的にしておくと、判断材料が返ってきます。
- 使う薬剤はどういう区分のもので、自分で使う場合の時間と回数はどう決まっているのか
- 今の歯や歯ぐきの状態で、先に済ませておいたほうがよい治療はあるか
- 自分の歯の色から、どのあたりまでを目標にするのが現実的か
- 人工物が入っている歯はどれで、周りを明るくしたときにどう見えるか
迷っている段階のまま相談して構いません。受けるかどうかを決めてから行く場所ではありません。
「ホワイトニング」がどれを指しているかでも変わる
もうひとつ確かめておきたいのは、「しない方がいい」と言われているものがどの方式を指しているかです。
歯科医院で受ける方法、歯科医師の管理下で自宅で使う方法、そして薬局や通販で製品を買って自分で使う方法。これらは扱うものも、関わる人も違います。しみやすさも、白さの続き方も同じではありません。
このうち薬局や通販で手に入る製品を自己判断で使うことについては、神奈川県歯科医師会の解説が、口腔内トラブルを招くおそれがあるとして注意を促しています。歯科で処方されるものと店頭で手に入るものの違いは、自宅でのホワイトニングは2種類ある|市販品と歯科の薬剤は何が違うのかで整理しています。
読んだ記事がどの方式の話をしているのかが分かると、「しない方がいい」がそのまま自分に当てはまるかどうかも見えてきます。
当院が扱っているのは、このうち歯科医師の管理下で自宅で使う方法です。費用は次のようになっています。
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、マウスピースをお持ちでない方が初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)・2ヶ月目以降11,000円/月(税込)、マウスピースをお持ちの方が初月から11,000円/月(税込)です。期間・回数は歯の状態により異なり、オンライン診療にもとづいて決定されます。主なリスク・副作用として、施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります。無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります。効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
自分の歯と目標が、どの方式に合うのか。そこから確かめられます。
よくある質問
Q. 「しない方がいい」と書かれているのは、全員に向けた話ですか。
A. 条件や状況を抜きにして誰もがやめるべきだ、という形で書かれているものは見当たりません。今の状態で先に治療が必要な場合、時期として控える場合、体質として使えない場合など、当てはまる人が限られる話が多く含まれています。自分がどれに当てはまるかを確かめるほうが、判断は進みます。
Q. 一度やめておいて、あとから始めることはできますか。
A. できます。むし歯や歯周病の治療が先になる場合も、妊娠中や授乳中で時期を待つ場合も、条件が変われば選択肢は戻ります。急いで決める必要がある性質のものではありません。
Q. まず市販のもので試してみるのはどうですか。
A. 歯科で処方される薬剤と、店頭で手に入る製品は作用する対象が違います。目的によって選ぶものが変わるので、自宅でのホワイトニングは2種類ある|市販品と歯科の薬剤は何が違うのかを先に読んでおくと、試す前に方向が定まります。
Q. やるかどうか決まっていない段階で相談してもいいですか。
A. 構いません。むしろ、条件の部分は診てもらわないと分からないため、決める前に確認しておくほうが判断しやすくなります。
まとめ
「しない方がいい」と言われる理由を分けると、次のようになります。
- 性質の違う3つが混ざっている — 歯そのものへの影響/その人の条件・時期/期待とのズレ
- 歯への影響は、審査項目として立てられている — 厚生労働省のガイドラインには歯面硬さと歯面溶解性の基準がある
- 「影響がない」ではなく「上限が定められている」 — 硬さが変わらないこととは書かれていない
- 条件の部分は、順番や時期の問題であることが多い — 治療が先、時期を待つ、など条件が変われば戻る
読んだ記事がどの方式について書いているのかを見分けることと、自分に当てはまるのがどれかを分けること。この2つができれば、「しない方がいい」という言葉は、判断を止めるものではなく、確かめる項目の一覧に変わります。
出典
- 歯科用漂白材等審査ガイドラインについて(厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長/令和5年4月21日・薬生機審発0421第1号)
- ホームホワイトニングvsオフィスホワイトニング(公益社団法人 神奈川県歯科医師会)
- 歯のホワイトニングをしたい その前に知っておきたいこと(公益社団法人 神奈川県歯科医師会)
- ホームホワイトニングとは?自宅でホワイトニングする方法と注意点(公益社団法人 神奈川県歯科医師会)
大阪心斎橋矯正歯科のホワイトニング
通院の負担を抑えたい方に向けて、オンライン診療と自宅でのケアで進めるホワイトニングをご用意しています。3Dスキャンで採得した歯型からオーダーメイドのマウスピースを作成し、歯科医師の診断のもとでホワイトニング剤と知覚過敏抑制剤をお届けします。
- 診察はオンラインで完結。マウスピースをお持ちの方は来院いただく必要がありません
- 歯型に合わせたオーダーメイドのマウスピースで、薬剤を歯の隅々まで行き渡らせます
- しみる症状に備えた知覚過敏抑制剤を同梱。経過はLINEでご相談いただけます
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月から11,000円/月(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

